辺見庸『しのびよる破局』

 青年たちが、障害者が、あるいは年老いた人びとが、排除されてもよいものとして路上に放りなげられているときに、それを痛いとも感じなくなって、わが身の幸せだけを噛みしめるような人生というのはなんてつまらないのだ、なんて貧しいのだ、なんてゆがんでいるのだという感性だけは失ったら終わりだとぼくはおもいたいのです。(p.123)


 大学で辺見庸が担当していた授業に出たことがありました。うまい話し方ではないものの、言葉の一つ一つに彼の思いが込められていて、思わず引き込まれてしまった記憶があります。病に倒れられて、さらに言葉に磨きがかかった気がします。